現在の自動車業界においては、先進運転支援システム(ADAS)および自動運転システム(ADS)の導入にともない、人工知能(AI)による車両操舵が本格化されようとしています。より安全に車両を操舵するために導入されるAIに対しては、ケアフルドライバー以上の操舵能力が要求されます。一方でAIシステムの安全性をどのように検証し保証するのかは難しい課題であり、残存するリスクをどのように許容できるレベルまで低減すべきかが重要なポイントとなっています。自動車メーカーであるOEMをはじめTier1、Tier2などサプライチェーン全体で自動運転技術を支えるためのインフラの構築や安全の証拠を示して論理的に説明する保障論証の作成に取り込まなければなりません。技術の進化に伴い自動車に対する安全要求は多様化し複雑化しています。安全性を考慮した開発設計が求められ、メーカーとしての説明責任を果すためには、十分な証拠と論証が要求される時代が到来しています。
このような時代背景もあり、2024年12月に発効された「ISO/PAS 8800 Road vehicles – Safety and artificial intelligence」は、AIシステムのライフサイクルを通してAIの安全性に対応することを目的とした国際規格です。またこの規格に関連する法規としてはUN-R157(ALKS)やEU 2022/1426 (ADS)などが既に発行されています。これらの法規要求に適合する上でもISO/PAS 8800はガイドラインとして有効です。現状のAIモデルの安全対策だけでなく、将来の課題を考慮し自動車のサプライチェーン全体の共通基盤となるプロセス構築をゴールとしています。
今必要とされている自動車のAI人材は、自動車の開発から廃棄までのAI安全ライフサイクル全体に精通し、AIシステムの安全性を理解しているAI安全エンジニアです。テュフ ラインランドのAI安全エンジニアトレーニングコースの受講により、自動車に関するAI安全性の全体像を理解し、要点を押さえて自社のマネジメントシステムに組み込む技量を身に付けることができます。この人が設計に関わればAIの安全は安心と言われる様な、なくてはならない人材として活躍が期待されます。
トレーニングコース概要
ISO/PAS 8800の規格概要コースを1日 + AI安全エンジニア実践コースを2日
ADASおよびADSに関わる安全要求の設定、開発と検証さらに保証論証については、難易度が高く実装も難しい場合が多い困難なテーマと言えます。そこで1日目の概要コースでは基本的な内容を理解しAIライフサイクルの全体像とのその位置づけ、AI固有の言葉の定義などを理解します。ISO/PAS 8800の概要のみを知りたい方はこの1日講習で十分となる様コース設計しています。
さらにAI安全エンジニアとしての知識の習得を目指す方には、具体的な実践内容を2日間追加して学習していただけるコース設定としました。実践コースでは考え方やプロセス技法をより詳しく理解できるのでトレーニング中に身に付けた知識を実務で直ぐにいかせるようになります。
講義のポイント
概要編
◆ 組織のAI安全ライフサイクルを理解し、各フェーズにおける必要な作業成果物を把握します。
◆ 自動車の安全性はISO/PAS 8800だけでなく他の規格 ISO 26262、 ISO 21448などと密接な関係があるため、その関係性を理解することは自動車の安全を考える上で有益です。また安全性を論証するにはどのようなアプローチが有効なのか、ライフサイクルを通してリスク分析や安全分析など必要な活動や対策に焦点を当てて説明します。
実践編
◆概要コースで把握した、組織のAI安全ライフサイクルにおける、各フェーズで必要な作業成果物を理解し作成できるようになることを目指します。安全要求の導出、開発方策の選択などについて説明します。
◆ AIシステムの安全性を論証する保証論証は重要な成果物です。どのように証拠を集め検証試験を行うべきか、また保証論証を構築する上で重要なポイントは何かについて学びます。
◆ 理解しておくべき項目については、的確なソリューションを考える演習を実施します。これにより、自社に当てはめて実践することができるようになります。OEM、Tier1、Tier2の立場など、あらゆる視点からチェックポイントを確認します。
◆ ISO/PAS 8800のデータ関連の検討事項をデータセットライフサイクルに基づいて理解します。また、検証および妥当性確認、安全分析など重要な活動を理解し身に着けます。
3日間講義の取り扱いトピック(一部)
概要コース
・ AIとは? なぜ安全への応用が難しいのか
・ ISO/PAS 8800 はじめに
・ アプローチと用語
・ 安全工学と基本概念のAI
・ AI安全管理
実践コース
・ AI安全要求の導出
・ 開発方策の選択
・ データの検討
・ 検証と妥当性確認
・ 保証論証
・ 安全分析
・ 運用中の方策
・ 開発フレームワークとツールの信頼性
・ 課題と結論
テュフ ラインランドのISO/PAS 8800 AI安全エンジニアトレーニングコースでは、
以下のような課題や疑問を解決できます。
• 自動車のAIの安全性をどう考えれば安全と言えるのか?
• 誰がAIの安全性について対応すべきか?
• ISO 26262, ISO21448への準拠が優先なのか、そうでないのか?
• 製品やサービスのAI開発プロセスが自社内で確立されていない。
• 規制や規格を熟読しても実践で悩んでしまい、1日セミナーを受講したが現場にいかせない。
独学や1日セミナーなどで要求事項を理解し実務でいかそうとするのはかなりハードルが高いようです。本トレーニングでは1日の概要コースと2日間の実践コースに分割して、じっくりと勉強してプロセス技法を理解できるためトレーニング中に身に付けた知識をすぐに実務でいかせます。
自動車業界に新規参入する業界や企業が増え、企業間の競争も厳しくなっている環境下で、AI関連の開発者や管理担当者の基礎知識の修得として、またAI安全エンジニアとして社内での地位を確立し的確な対応ができるようになるため、本トレーニングをご活用ください。
トレーニングコースを終了した時点で、以下を習得することが可能です。
• ISO 26262 , ISO21448 などの関係規則との関係を理解できる
• AI安全管理の重要性を理解し、全社的なガバナンス体制としてAI安全ライフサイクルを構築できる
• AIシステムの保証論証の構造を学び、保証論証を作成し評価できる
• 安全要求の導出を理解し、実践できる
• データセットライフサイクルを理解することで、設計。実装、検証、妥当性確認、保守が実践できる
• AIシステムの検証および妥当性確認を実践できる
• AI安全分析技法を理解し実践できる
• 運用中のAIシステムの保証論証の継続性を再評価できる
• エクササイズ(演習)や事例より、実践的な解決策を導出できる
テュフ ラインランドはこの他に、ISO/SAE 21434 自動車のサイバーセキュリティ スペシャリスト資格トレーニングや、ISO 26262 機能安全エンジニア資格トレーニングを提供しています。
ISO 26262 FSEおよび ISO/SAE 21434 CySecの資格保持者は世界中に既に20,000名以上おり、各業務で活躍されています。テュフ ラインランドのトレーニングは世界中でも高く評価され、さまざまな企業で社員向けトレーニングとしても活用いただいています。